今日もまた太陽は昇り 川は流れる
美少女の世界には 何人も冒す事の出来ない掟がある
その掟を破る者にはただ 「死」あるのみ

だが ここに一人の少女があった

太陽の煌きも 月光の蒼明も 一瞬
死の伴奏と変わるその定めを
自ら選び 貫いてゆく者・・・

川澄舞 美少女・川澄舞・・・


【これまでのあらすじ】
時は20世紀末、末法の世。
厳しい身分制度の中、自由を求めて美少女キャラとなった天才美少女川澄舞だったが、
非人道的な美少女業界に絶望し、「抜け美少女」となる。
迫り来る刺客を次々と倒し、果ての無い逃亡の旅を続ける川澄舞に、明日はあるのか・・・!?

  第四話 『ストール』

今日も今日とて、流浪をつづける川澄舞・・・
その影を追う、尾行者ふたり――
今回の刺客、香里・栞の姉妹である。


「お姉ちゃんっ・・・今こそ、川澄舞を討つときですー」

「栞っ・・・急いちゃダメよっ。あいつは、無敵のはずのみさき叔母さんでさえ倒した・・・。
『タコさんウィンナ落とし』を破らないかぎり、あたしたちに勝ち目はないわっ・・・」

川澄舞のオリジナルホールド『タコさんウィンナ落とし』・・・それは相手を箸でひっつかんで放り投げ、
そのまま地面に叩きつけるという一撃必殺の荒技である。

「大丈夫ですーっ・・・私たちの『ストールの術』があれば、たとえ川澄舞といえど・・・!!」

「ダメよっ・・・機をうかがうのよ。わかったわね・・・?」

「・・・はい、お姉ちゃん」

(・・・お姉ちゃんは怖気づいているっ・・・)

(川澄舞とて、鬼神にあらず・・・一介の美少女!)

(いのちを捨ててかかれば、勝機はある・・・はずっ・・・!)

ひそかに香里と別れた栞、川澄舞のスキをうかがう。

(『タコさんウィンナ落とし』は強力だけど、食事中にしか出せない、といううらみがありますーっ・・・)

(つまり、食事をしていないところを狙えば・・・!!)

しかし川澄舞は行く先々でたこ焼きだのせんべいだのを食べ歩いており、なかなか好機はおとずれぬ。
が・・・はじめて、川澄舞が、箸をおくときがきた。
両手に焼き芋をもち、はぐはぐとやりはじめたのだ。

「・・・いまこそっ!!」

栞、ストールをバッ、と広げるや、ビルの上から滑空し、川澄舞へと急降下。
美坂家に伝わる奥義、『ストールの術』である。

「川澄舞・・・貰いましたっ・・・!!」

カッターで川澄舞の喉笛を切り裂かんものと肉迫する栞。

「・・・?」

ここではじめて気づいた川澄舞、迫る栞を見てひとこと、

「・・・み゛ま゛み゛ま゛」

口中が芋にふさがれていた。

「箸がなければ『タコさんウィンナ落とし』は使えまいッ・・・覚悟!」

「・・・・・・」

ガガシシイッ!!

「・・・何とぉっ!?」

なんと川澄舞、あわてずさわがず、両手の芋で栞をハッシとつかんでいた。
そして、そのまま凄まじい勢いで栞を宙に投げ飛ばす。

「えゥゥゥ〜ッ!?」

自らも跳躍した川澄舞、栞をはがいじめにして、そのまま地面に脳天落とし。
そのさまは、まさに天より落ちた流星のごとし。

ドガシシシッ!!

「おっ・・・落ちる・・・から・・・隕石って・・・言うん・・・(DEATH)」

立ち上がった川澄舞、なにごともなかったかのように焼き芋をかじりはじめる。
が、ふいにその動きが止まる・・・

「・・・・・・っ!!」

「・・・、・・・!!」

「・・・。・・・、・・・」

喉につまらせただけらしい。「栞・・・ッ!! 栞いっ!!」

おっとり刀で駈けつけた香里、妹にとりすがって声をかける。

「・・・・・・」

「よ、良かった・・・無事だったのね」

『よすでんう言てっ跡奇、らかいなき起♪』

「・・・えっ・・・!?」

『ねよすでいいこっかでいたみマラドとっょち♪』

「しっ・・・栞!?」

『かたしまれらいてっ笑、したわ♪』

「栞・・・栞が・・・●●●●(ピー音)にっ・・・!!」


(Aパート終了)


●●●●となった栞の世話に明け暮れる香里。

『すでんたてれがこあ、にのういうこ〜♪』

「・・・あんなふうになるくらいなら、いっそ・・・」
「・・・・・・」
「かならず・・・仇はとってあげる・・・栞っ・・・!」

しかし単身にて川澄舞に勝てる目算は立たぬ。
『ストールの術』が効かないことは確認済みゆえ、香里に打つ手はなかった。

「なんとか・・・なんとか、手は・・・!」

『すで敵の類人〜♪』

「――?」

見れば、栞が亡きみさき叔母さんより習った『アイスクリームの術』で、タバスコ入りホットドッグを処分していたのだった。

「●●●●になっても、身についた術は忘れないのね・・・」

ほろりと涙をうかべる香里・・・と、その瞳に燃え立つものがあった。

「・・・そうか・・・『アイスクリームの術』!! おかげで、川澄舞を討つ手が閃いたわ・・・
 ・・・ありがとう、栞」

栞に歩みより、その頭を撫でる香里。

『すで点0きたたラグモ〜♪』

うれしそうにほほ笑む栞。

「じゃあね・・・栞。
 達者で、暮らすのよ・・・!」

栞の細い肢体をくっと抱きしめた香里、そのまま飛揚して姿を消す。

『よすまりなかと何、ばれき起もで跡奇〜〜♪』


・・・ところ変わって、こちらは川澄舞。
とたりとたりと歩いていたが、ふと、足を止めて前方を見れば、皿の上にバニラバーが二本。
ぬけめなくあたりを見渡したのち、すかさず両方ともゲットする川澄舞。

「・・・うまうま」

と、そこに一陣の烈風とともに駈け来たるは他ならぬ、復讐鬼・香里・・・

「今こそ・・・妹の・・・栞の仇を討つっ・・・!!」

妹のカッターナイフを手に、川澄舞へ突き進む香里。
川澄舞、あわてることなく、二本のバニラバーで香里を・・・

 ・・・ツルゥッ!!

「・・・!?」

「バカめっ・・・アイスは溶ける・・・そして溶ければ滑りやすくなるっ!
 栞ッ・・・あなたの無念、晴らしたわよッ・・・!!」

川澄舞のバニラバーから逃れた香里、カッターナイフを川澄舞に突き立てる・・・!

 ・・・パリィーンッ!!

「なっ・・・!?」

カッターの刃が! こなごなに砕けていた・・・
香里は悟った 栞との戦いのさい 川澄舞がすでに亀裂を入れていたのだと・・・
そして悟った 栞への思いゆえに 川澄舞の術中に自分は陥っていたのだと・・・

川澄舞の太刀が、抜き放たれ・・・

「・・・栞ッ!!」

 ――“変移抜刀川澄斬り”

香里がこの世で最後に見たのは、宙に舞った二本のバニラバー・・・
そしてそれをぱくん、とくわえ直した川澄舞の、姿だった。『すで嫌ものる見〜〜♪』

『あ』

『すで棒のスイア〜♪』

『すでレズハ、もと本ニ、〜ぅえ・・・』

『すでいならい〜〜♪』

『・・・・・・』

『・・・』


おりからの風が、先刻まで香里だったもののウェーブヘアを撫で上げつづけていた。
その脇に放り捨てられた二本のアイスの棒は、寄り添っているようにも、見えた。

そう、まるで、仲の良いきょうだいのように・・・『第4話 ストール 完』


EDソング『美少女のテーマ』

♪魔物が通る 魔物道
 風が川澄舞の 影を斬る
 独り 独り 川澄舞(カワスミマイ〜)
 独り 独り 川澄舞(カワスミマイ〜)
 風を斬って 駈けてゆく




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